まぼろしの曽祖父
ブログでも書こうかな〜と思って下書きを漁っていたら、こんな記事を見つけたのでサルベージ。今から4年前、二十代半ばに書いた記事である。
***
一族にとって昨年最大の衝撃だったできごとは、祖父が婚外子だったことですかね。
この記事↓で書いたように、2014年の5月に私の祖父が逝去した。滲むほど空の青い、五月晴れの日であった。
祖父の死後、死亡届を出すために父が役所で祖父の戸籍を取ったところ、戸籍に不明な点を発見したという。
通常、夫婦から生まれた子供はその両親を結んだ間に引いた垂線に表記される。しかし、祖父の上には夫婦の表記が無かった。祖父は、曽祖父のみから下りた線の先に居た。隣に、二人の夫とその間の子供に囲まれた曽祖母の名前があった。祖父の名前は生みの母親から拒否されて、ぽつねんと紙に浮かんでいた。
曽祖母は家付き娘で、生涯を通して得た二人の夫には、曽祖母の苗字が刻まれていた。対して、祖父は生まれてから死ぬまで、ずっと曽祖父の苗字を貫いた。
私の旧姓も曽祖父のものだったから、疑うことすら無かった。
祖父は、婚外子だったのだ。
***
曽祖父母の時代。曽祖父が無くなったのが大正10年あたりだから、一世紀近く昔になる。その時代には、「家」というものが現代の比にならぬほど強い力を持っていた。(それこそ宮尾先生の「蔵」の世界である)
伝聞に過ぎないが、曽祖母の更に上、私の一曾祖父。。。ややこしいので爺さんと呼ぶが、とりあえずこの人物は不動産をうまく運用し、地主として一代で財を築き上げたという。実際、現在も祖父の家の周囲一帯は全てこの爺さんの土地で、今はマンションが立ち並んでいる。(諸事情あって、それらの土地は祖父に一片の権利もない)
爺さんには財があった。だが、名士として尊ばれていたかどうかは定かではない。つまりは成金だったのだろう。とにかくプライドが高く、欲の深い人物だったという。いつの世も、成り上がり者は似たような精神のようだ。それで、一人娘の婿を選り好みした。条件をつけまくり見合い回数を重ねた結果、やっと婿を迎えて、間に息子が生まれた。だが、その婿は早くに亡くなってしまった。死因はおそらく病死と思われる。当時はスペイン風邪が流行っていた時期だから、それに罹ってあっさりと亡くなったのかもしれない。この早世した第一の婿は、跡取りを残してそそくさと退場した。
曽祖母は家付き娘だったから、家のためにも一刻も早く次の夫を迎える必要があった。
ここでようやく、私の曽祖父が登場する。
私の曽祖父であるこの人物は、謎の部分が多い……というか、謎しかない。
2015年において、判明しているのは