何たる迷惑であることか!

独自の路線で生きています

2022年の読書まとめ

 

 

kinaco68.hatenablog.com

 

 人類史上稀に見る「万能の天才」、フォン・ノイマン。コンピュータ、経済学、天気予報、核兵器……その業績はあまりに多岐に渡り、フォン・ノイマンはまさに現代社会の基礎を作った人物と言っていい。 頭脳は大天才ながら、スポーツは苦手だったり車の運転が下手だったりとカワイイ一面も持つ。 フォン・ノイマンは大天才にして、人当たりが良く社交的な好人物。しかし、その正体は「人間のふりをした悪魔」であった。  

 筆者の伏線の張り方が上手いため、じっくり読むほどに面白い一冊。

 今年の元日に買って読んだ本。数理モデルなどの部門は難しすぎるので飛ばし読みしたが、それでも面白さは止まらない本であった。

 唯一、フォン・ノイマンの晩年に関する描写が少なかったのが、ちょっと食い足りなかった部分。日本に原爆を落とした悪魔の死に際を、もうちょっと克明に読みたかった。

 

 日本一自殺率の低い町、徳島県にある海辺の町の話。

「ゆるくつながる」「問題は早期発見、早期解決」「病は市に出せ=問題は一人で抱え込まずに周りへ発信せよ」の教えなど、数々の金言がある。こういう町に住んでいたら、一人で病むことなど無くなるかもしれない。

 

 

 お盆に先祖を振り返っていたら、なんと自分の家系が「一家創立」という珍しい戸籍形態をしていたことが判明。俄然戸籍について知りたくなって読んだ一冊。残念ながら「一家創立」について載ってはいなかったが、非常に面白い本だった。

 現代の戸籍は、戦後、GHQの指導のもとに急ごしらえで作られたものだった?! 戸籍を作った当時の役人が「戦後の戸籍は家族単位でなく個人単位にすべきだった」と悔いていた話なども面白いが、白眉は「日本の家族残酷物語」とも言える新聞に寄せられた身の上相談である。

 家父長制・男尊女卑の維持のため、弱者はどこまでも踏みにじられる。日本の戸籍制度は便利な面もあるけれど、そもそも人間の生理に合っていないのだ、と深く考えさせられた。

 

 相手を悪辣な手段で陥れる陰謀家でありつつ、弱者への限りなく優しいまなざしを持ち続けた政治家、野中広務の伝記。「野中さんがそこまで権力を持ちたがるのは、あなたの業というものでしょう。同じように、私も書いてしまうのが業なんです」という著者の言葉が良かった。

 

今年のベスト本

 今年のベスト本。家のリビングで、電車の中で、コインランドリーの待ち時間に何度読み返したかわからない一冊。

 

(中略)子育てしながら働く中で身につけたところも大きかったと思います。常に時間がない中で、悩んでも仕方ないことは横に置いて、優先順位をつけてやるべきことをやるというのが習慣になっていました。これが二十代で逮捕、起訴されていたら、随分、違っていたかもしれません。仕事や人生の修羅場を乗り越えてきたことが役立ったのです。自分が今、考えなければならないのは、絶対に体調を崩さないようにすることと、裁判の準備をすること。それらに集中しようと考えました。

村木 厚子. 日本型組織の病を考える (Japanese Edition) (p.60). Kindle 版. 

 

 逮捕されてから間もなく、自分の状況を整理しようと二つの問いを自分に投げかけました。一つは、「自分は変わったのか」という問いです。そして、私自身は何も変わっていない、様々な報道がされて、置かれた環境が変わっても、逮捕される前までの自分と少しも変わっていないということを自分で確認しました。もう一つの問いは、「私は(何かを)失ったのか」という問いです。直前まで手がけていた仕事は途中で放り出さなければならなくなった。もしかしたら、離れていった人もいるかもしれない。けれど弁護士から、無実を信じて待っていてくれる人がたくさんいると知らされ、人という素晴らしい財産を持っていることを実感することができました。

村木 厚子. 日本型組織の病を考える (Japanese Edition) (p.64). Kindle 版. 

 

問題は、堂々と「その建前は無理」「それは現実的ではない」とは言わず、建前は建前で祀っておいて、実際はこっそりと本音ベースで対応しようとしたことではないでしょうか。

村木 厚子. 日本型組織の病を考える (Japanese Edition) (pp.76-77). Kindle 版. 

 

一番重要なことは、勇気を持って、建前と本音の使い分けをやめて、「コンプライ・オア・エクスプレイン」へと転換を図っていくことです。

村木 厚子. 日本型組織の病を考える (Japanese Edition) (p.79). Kindle 版. 

 

 今年も良い本との出会いがあって、実り多い年だった。来年も、良い本と出会いたい。