意地と涙の「はなやぎかい」
縁もゆかりもないけれど、玄人の世界になぜか惹かれてしまう。
最近、スマホでネットを見るとバナーに出てくる「親なるもの 断崖」を試し読みしたら、漫画の壮絶さは去ることながら、花柳界への想いが再燃してしまった。
試し読みだけでも、発展途上国日本のどん暗さをまざまざと見せられる。絵が綺麗で、綿密に調査がしてあるため迫力は尚更だ。是非購入したいが、電子書籍サービスに月額登録する踏ん切りがつかない・・・
花柳界へのあこがれ
中学時代の愛読書は宮尾登美子全集だった。(ちなみに高校ではシェイクスピアに狂った)
昭和初期〜戦後まで、四人の仕込みっ子を巡る「寒椿」を皮切りに、
「芸娼妓紹介業」-つまりは女衒の家に生まれた娘の鬱屈を描く「春燈」、
栄華を誇った楼閣を花弁、薄幸の芸妓を花芯に据えた「陽暉楼」と、
自伝的意味合いを持つ宮尾小説の「芸妓もの」を貪るように読んだ。
「一絃の琴」や「序の舞」などの女の仕事ものも良いけれど、「春燈」〜「仁淀川」までの自伝的小説は実際に作者の体験してきた事柄のためか、文体から香り立つ空気が違うように思う。湿度があり、ぬくもりがある。行間の先に表情が見える。
今は著者の出世作 「櫂」を再読している。
- 作者: 宮尾登美子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1996/10/30
- メディア: 文庫
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初読時は夫婦の機微もわからぬ人間だったから、ただ話の筋をなぞり、「娘義太夫」とはどのようなものか想像するくらいだった。
実際に人を愛するようになって、読み進めるのが辛くて辛くてたまらなかった。 引っ込み思案で不器用な嫁の喜和は、女衒の夫に翻弄され、息子は病気で失い、あまつさえ他の女との間に産まれた子供を養育する憂き目に遭う。
女に社会的地位も経済力もなかった時代。どれだけ家庭に貢献していようと、一旦男に飽かれればふいと捨てられる、その身のなんと寄る辺のないことか。
それは花に柳の世界でも同じで、いかに権勢を誇った妓であろうと、旦那が離れればそれまで。システムとして、男に依存してしか生きられない地獄が遊郭の裏にはある。
しかし、終盤で彼女の生き方はコペルニクス的転回を起こす。家を出され、選り好みせず店屋で働くうちに、本当の意味での自立を果たすのだ。
それは、「仁淀川」にも引き継がれる爽やかさだ。
- 作者: 宮尾登美子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2003/08/28
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自立こそ、虐待と侮蔑の地獄から逃れる最大の報復だ。そして自立は、誰にでも出来る。今は気付いていなくても。