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【感想】「逃げ恥」 10話~夫婦を超えてゆけ~

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 毎週テレビの前で「ア---------!!」「ギャーーーーー!!」悶えながら見ているドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」第10話の感想です。

 

/*「逃げ恥」第10話までのネタバレを含みます */

 

【10話のあらすじ】

契約結婚から恋の芽生え、幾たびかのすれ違いを経て、ついに両想いであることを確認したみくりと平匡。合間に平匡さんの誕生日(意味深)も挟みつつ、10話ではついに「仕事としての結婚」を脱却しようとするが……

 

 「逃げ恥」は社会はドラマ

 夫婦同衾の場面が平匡=ロボット、みくり=ぬいぐるみの会話で表現されている、「かわいいの前には絶対服従」なるパワーワード、餃子を包む平匡さんの手が綺麗すぎる、さらりと乙女ゲーの画面が挿入される、星野源かと思ったらただの王子様だったなど、とにかく

 

 ガッキーも星野源もかわいすぎるんじゃーーーー!!

 

 夜分に何度か叫びました。が、なんとラストは平匡からのプロポーズ失敗という「来週どうなっちゃうの!?」な展開に。

 とはいえ、「逃げ恥」は社会派ドラマ。当たり前に蔓延っている社会の不条理や理不尽に切り込んでいくのが本質なので、いわゆる従来型の結婚方式である、平匡の「夫が会社員、妻が専業主婦として法律的に結婚する」提案は受け入れられないのが当然のところ。

 それにしても、ここでうっかり平匡が、自身がリストラ候補に挙がった理由として「住民票が同一住所であるだけで、みくりと籍を入れておらず、扶養対象が居ない」ことから「僕にもみくりさんの人生に責任を持たせてください!」とか言ってしまっていたら、如何にガッキーであったとしても「ひゃい……//」とプロポーズを受け入れてしまったかもしれません。「逃げるは恥だが役に立つ」、1話分の尺を残して~Happy End~ 危ないところでした。

 しかしながら劇中で、あまりにみくり・平匡のカップルが可愛いため「このまま従来型の恋愛結婚に押し進んでもいいのでは……?」とかなり思ったのも本音であります。それだと最終話が二人でイチャイチャしてるだけの動画になりますけどね

 

 恋愛至上主義に対するアンチテーゼ

 「逃げ恥」の魅力のひとつは、「当初何の感情も抱いていなかった相手へ、共同生活を送ることで互いに愛情が芽生えていく」過程をつぶさに観られることだと思います。

「逃げ」=生きるための手段としての結婚に走ったみくりと平匡の関係は、互いの利益が一致した、雇用主と従業員でした。その二人が、利害を超えて次第に惹かれあっていく姿には、いわゆる恋愛関係とは違う、清らかさがあります。

 出会った当初から激しい恋に落ち、愛を持って共に生きていく……それは理想の人生かもしれませんが、愛だけで一生をうまく渡り切れるものではないなんて誰もが知っているわけです。今年に限った話ではありませんが、巷には不倫が溢れており、結婚した夫婦の3組中1組は離婚に終わる。ひと昔前、個人よりも「家」の存続が何よりも大事であった時代の結婚観よりは選ぶ自由が増えたかもしれませんが、もはやロマンチック・ラブで永久に結ばれる夫婦など儚い幻想に過ぎないことを、現代の人々は生まれ育った家庭や、社会の空気の中で理解しているのです。

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契約結婚から恋愛結婚へ切り替えようとした平匡の提案は、みくりを扶養対象に入れることで、彼女の家事労働を無償化することでした。労働であり、経済活動であった家事が、結婚した途端に無償奉仕に変わってしまう。何故、夫は妻に無償奉仕を押し付け、妻は受け入れてしまうのか?「そこに愛があるから」耐えなければならないのか?

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 「わたくし森山みくりは、『愛情の搾取』に断固反対します!」

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「逃げ恥」に期待するラスト

 男女の不平等、少数派へのレッテル、社会に根付いた偏見に、鮮やかに切り込んでみせた「逃げ恥」。本作には是非、一般常識を背負い投げするような、コペルニクス的転回を期待します。

 個人の予想としては、みくりが経済活動する場(例えば商店街のアイディア係)を足がかりに、平匡に依存しない経済能力を身につけ、平匡にプロポーズ、なんてどうかなあ……もしくは法律婚はせず、事実婚を強化して、子供が生まれた時だけ籍を入れる、とか。

 

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 画像は事実婚の先達水谷さるころ先生の「結婚さえできればいいと思っていたけれど」より。どちらかの扶養に入ることを前提にした法律婚ではなく、互いに働き続け、支え合うことを目的とした夫婦の姿。ネオ・夫婦と言っていいと思います。

 みくり・平匡の二人には従来の夫婦を越えた夫婦となって欲しい。そんな願いを胸に、最終回に臨みます。