何たる迷惑であることか!

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2017年ふりかえり〜エンタメ編〜

 今年は公私ともに充実してた割に(だから?)ブログ投稿が少なかったので、年末駆け込み的にふりかえりをしていくよ!

 

2017年エンタメベスト

〜読書部門〜

 今年の夏、二年目にも関わらず九州の夏はモ〜レツに蒸し暑く、また体調もとても悪かったので、反動のように冬山登山の小説ばかり読んでいた。

 

沢木耕太郎「凍」
凍 (新潮文庫)

凍 (新潮文庫)

 

 

夢枕獏神々の山嶺
神々の山嶺(上) (集英社文庫)

神々の山嶺(上) (集英社文庫)

 
神々の山嶺(いただき)〈上〉

神々の山嶺(いただき)〈上〉

 

 

「凍」の山野井夫妻といい、「神々の山嶺」の羽生といい、彼らは文字通り山に登ることへ人生を捧げている。山が好きだからとか、楽しいから登る、などというレベルではない。標高7000m、8000mの世界はすでに死の世界である。個人の肉体の強さとは無関係に、高山病、吹雪、雪崩は人の命を簡単に奪う。登りきったところで、山野井夫妻は肉体の多くを永久に損傷してしまったし、「神々の山嶺」に至っては、終盤の記述はほとんど幻覚との闘いである。

 そうまでして、なぜ、山に登るのか。結局のところ、どちらの作品もその答えは言葉で書いていなかった。言葉にはできないが、魂の部分に語りかけるものがあった。暑い暑い九州の地で、息も絶え絶えに横たわりながら読んだ本であった。

 

中島らも「今夜、すべてのバーで」

  吾妻ひでお失踪日記」を読んで以来、なぜかアル中にまつわる文学が好きである。双極性障害かつ、アルコール各種依存症だった中島らものが、本人の入院生活を小説にした本作。アルコールに蝕まれたはちゃめちゃな生活、患者から医者までもれなく病んでいる病院の日常、やめたいのにやめられない依存の恐怖……依存症に陥った理由についての怜悧に分析しながらも、一向に飲むことをやめない矛盾。頭でっかちに思考をこねくり回す主人公の対比としての、生命力の象徴としての女、「さやか」(どうでもいいけど、彼女のモデルは長年の愛人だったわかぎゑふだよね)

 狂気のエンターテインメントとして、最高に面白い本であった。惜しむらくは、退院して以降の地味な生活については何も書かれていないこと。本当の出発は、地味な地味な断酒生活を一歩ずつ続けていくことなのに。

 

〜ドラマ部門〜

「カルテット」

www.tbs.co.jp

 多くの場所で語り尽くされているので、わざわざ言葉を加えることはない名作。台詞の自然さ、演出の巧みさが素晴らしかった。個人的に好きなシーンは、第一話で真紀さんとすずめちゃんが家森さんの高級ティッシュをばらまいて遊ぶシーン。いい歳した大人ほど、純粋なものである。全てが曖昧に、しかし着実に進行していく、人生のリアリティ。それにしても、このドラマの吉岡里帆は可愛くて邪悪でつまり最高だった

 

「リバース」

www.tbs.co.jp

 

 湊かなえ氏といえば「とにかく気分が悪くなる小説書く人でしょ?」くらいの偏見しか持っていなかった私。実際、小説の「リバース」も壮絶に後味が悪かった。(もちろん筆力はすごい) 

  しかし、同じく湊氏が脚本を書いたこのドラマは、ただ後味が悪いだけではなかった。結末のその先、未来を描いていた。罪を犯していても、清算できない過去があっても、それでも人間は前に進めるのだ、と強く訴えかける作品だった。

 なお、殺人犯から賭博依存症まで人間のクズをやらせたら天下一品の藤原竜也が、このドラマでは一途に彼女を想う(想いすぎてだいぶ気持ち悪い)男を演じていたのは最高に萌えた。気弱で純朴な藤原竜也をもっと見てみたい……!

 

仮面ライダーエグゼイド」→「仮面ライダービルド

www.tv-asahi.co.jp

 

www.tv-asahi.co.jp

 

 ニチアサの仮面ライダーシリーズは、「鎧武」「ドライブ」と見てきて3作目の「エグゼイド」。いい意味での「お約束」を随所で決めてくれており、毎週次の展開が楽しみで仕方なかった。とりあえず本作のMVPは神です。

 そして、エグゼイドからの「ビルド」。これは自分でも驚くほどハマった。日曜日の朝は自主的に早起きして、9時を心待ちにしている。年末年始など放送休止の日があると悲しくて仕方ない(あまちゃん現象)。

 本作は仮面ライダーシリーズの原点回帰の意味もあってか、バイクに乗るシーンが必ず挿入されていたり、「悪の組織に改造されて仮面ライダーになった」原則を踏襲していたりと、全く新しい作品でありながら過去作品への敬意が至るところに感じられる。ついに第三のライダーも出てきたし、今後の展開から目が離せない。

 

〜音楽部門〜

 椎名林檎「目抜き通り」

www.youtube.com

 

 「目抜き通り」を聴いて、数年前、椎名林檎と作家の西加奈子が対談するドキュメンタリーで、椎名林檎が「女の子が音楽に合わせてきらびやかに踊るショーをやりたい。自分は裏方に徹したい」と言っていて、ああこの人は本当にエンターテイナーなのだな、と感じたことを思い出した。「いや、林檎さんが裏に引っ込むのは周囲が許さへんやろ」と西加奈子にツッコまれていた通り、本人の希望とは裏腹に「椎名林檎」はずっと表舞台に引っ張りだこだけれど。とにかく皆を楽しませたい、そのためにはどんなことも苦にならない、というエンタメ精神が強く伝わってくる音楽だった。

 

2017年ふりかえり、エンタメ編は以上!