何たる迷惑であることか!

独自の路線で生きています

【書評】友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法

 

友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法

友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法

 

 

 

 石川善樹著『友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法」を読んだ。

 本書はどちらかというと男性向けの内容。本にもあるが、女性は比較的につながりを作ることが得意なので、女性の読者は「当たり前じゃん!」と思うことが多いかもしれない。(少なくとも私はそうだった)

 放っておくと孤立しがちな現代社会で、如何に多様なつながりを作り、健康的に生きるかを書いた本である。

 読んで、気に入ったところを書き記しておく。

 

人は無職に耐えられない

「弱いつながり」がスネップ、ニートを救う。

 スネップ(SNEP)とは、"無職の独り身"のこと。

 未婚の無業者のうち、普段ずっと一人でいるか、家族以外の「つながり」が無い人々のこと。「ニート」に比べてスネップは「つながり」を強く意識した概念

 

 人間は驚くべき適応力を持っていますから、それが幸福な出来事であれ、不幸な出来事であれ、順応できるのです。結婚、離婚、引っ越し、昇進、誕生、喪失……(中略)

 

 その一方で、どうしても順応できないライフイベントがあります。それが失業と病気です。

 つまり仕事が無い状態というのは、人間としてどうしても順応することができない、とんでもなく辛いことなのです。

 

 多くの人が順応できない失業に有効なのも「つながり」です。それも家族や同級生、同僚などの強い「つながり」ではなく、弱い「つながり」だと言われます。これはスタンフォード大学社会学者であるマーク・グラのヴェッター教授が「弱いつながりの強み」として概念化して有名になりました。(中略)

 

 強い「つながり」で結ばれている人は置かれている環境が似ているためにほとんど同じ情報を共有していますが、弱い「つながり」で結ばれている人は環境がまるで違うので自分の知らない新しい情報を持っている可能性があり、状況を打破する力を持っているかもしれないからです。

 

 自分も昨年新卒で入った会社を退職し、二ヶ月ほど専業主婦をしていた。そして、見知らぬ土地、という刺激的な要素があったにも関わらず、無職には一週間で飽きた。家事はたまにやる分には楽しいが、毎日となると賽の河原の石積みのような気持ちになる。家事にはキリがないし、成果基準も自分では決められない。日を追って、気力が失われていくのがわかった。なので、退職した会社から離職票が届くまでの一ヶ月は実に辛かった。無職、という身分にはいつまでも慣れない。あの絶望的な気分は、雨の日寒い日曇りの日、会社に行きたくない気持ちを追い払うカンフル剤となる。

 自分は何かにきちっと管理されていなければ、生活すらままならないのだ……この一ヶ月でよくわかったので、それが収穫といえば収穫である。

 

退職後も夫婦円満でありたいなら「亭主関白」であれ

 ただし、この場合の「亭主関白」とは「家庭で夫が独裁権を握る」という意味ではない。夫がホストとして妻をもてなし、上手に支配される技のことを指す。

 全国亭主関白協会という組織は、(退職後の)将来妻に嫌われないために「亭主関白になる」ことを勧めています。全国亭主関白協会は、「亭主が変われば、日本が変わる。日本の未来を明るくするのは、上手に妻の尻に敷かれる心とワザを持つ亭主力である」という理念で活動している団体です。

 亭主とはお茶の世界ではもてなす側のことです。

 さらに関白は天皇に次いで2番目の地位を占める存在です。

 妻を天皇のように崇め、自らは関白として亭主のように妻をもてなすのがこれからの時代の新しい「亭主関白」。それなら(退職後に関係が変わり、失われがちな)妻との「つながり」も保てます。

  配偶者と長く、上手く付き合うことこそ人生の最大の課題なのだと思う。年齢も、育ってきた環境も、脳の構造も何もかも違う他人と暮らすことは、とても難しく、面白い永遠のチャンレンジなのだ。

職場での「つながり」がいい仕事といい人生をつくる

 若い世代が職場で「つながり」を持とうとしない。

  終身雇用が前提だった日本でも働き方が大きく変わり、今では転職が当たり前となっています。そうなると、どこの会社も基本的には(長く勤め上げることを考えていないので)スキルアップのための腰掛け的な存在となってしまいます。

 特にスキルアップを強く求める若い世代は、自分が属している組織に対してあまり強くコミットしなくなります。でも、組織に対して本気でコミットしていない人には、いい仕事も回ってきません。すると、たとえ能力があっても活躍できませんから、本人は働いていても面白くなく、転職を考えるようになります。この繰り返しでは転職の回数ばかりが増えるだけで、本人が望んでいるスキルアップにもつながりません。

 いずれはどこか他のところで働きたいと考えている若い世代は、自分が属している組織ではなく、外の世界と「つながり」を持とうとします。(中略)

 会社以外の多様な「つながり」を持つことは大切ですが、それ以前にまずは職場で身近にいる人たちと「つながり」を造り、自分の仕事の基礎を固めるほうが大事なのです。

 

 転職を重ねるジョブホッピングでいろいろな専門性を広く浅く身につけたとしても、それだけで評価されるのは30代くらいまでです。それ以降はこなすべき仕事のスケールが大きくなりますから、専門的なスキル云々ではなく、生きる姿勢や人間力のようなものが問われるようになります

 専門性が高い仕事もスケールが大きくなると、結局は多くの人々と「つながり」ながら総合力で立ち向かうしかなくなります。そこで問われるのは専門性を超えた仕事への覚悟のようなものであり、そこで腹が据わっているひとは人望が得られて良い仕事が出来るようになります。そうした仕事への覚悟、人間力を磨くために欠かせないのも「つながり」なのです。

  "組織に対して本気でコミットしていない人には、いい仕事も回ってこない"とは本当のことで、仕事、というよりも組織に対して正面から関わろうとしない人のことを、周囲は敏感に嗅ぎ付ける。そして、そういう人間は少しずつ周囲から距離を置かれるようになり、仕事も親身には教えてもらえない。「仕事が面白くない」から、外に目を向けるようになる。結果、退職につながる。周囲に心を開かない態度が、転職先で急激に変わることはあまりないだろう。だから、転職を繰り返すこととなる。望まぬ職についてしまった原因は、仕事の良し悪しでなく、本人の心の態度にあるかもしれないのに。悪循環。

 

職場の同僚があなたの寿命を左右する

 寿命に関して、社会的な支援としての上司のサポートが意味を持つのか、それとも同僚のサポートが意味を持つのか。(中略)

  研究の結果、職場で仲間からの社会的サポートをほとんど受けていないか、あるいは全く受けていないグループは、サポートを受けていたグループと比べて調査期間中の死亡率が2.4倍にのぼりました。その一方、上司が有効的であるかどうか死亡率にほとんど影響しなかったのです。

 仕事をやめるときは、会社に絶望するのではなく上司に絶望して辞める、とよく言われますが、この研究では上司がどういう人間かは寿命にあまり関係がなく、むしろ同僚たちがどれだけサポートしてくれるかが寿命に影響していたのです。

 

 仕事をしている以上、何らかのストレスを受けるのは当たり前です。それを緩和してくれるのは上司ではなく同僚であり、同僚たちの支援が多いほど「つながり」のパワーが働いてストレスが分散されるので、寿命が延びたのでしょう。

 

 "退職の原因は上司ではなく同僚である"とはよく言ったものだ。ブラックな環境でも、同僚の質が高ければ持ちこたえられる、ということか。前職もそうだったなア……と愛憎入り交じる気持ちで振り返る。私の場合、前職は完全にブラックだったが、頼れる上司と底抜けに優しい先輩、本音で話し合える同僚が居たので、逆に仕事を辞める決断ができなかった。仕事はブラックだが職場には恵まれたのだ。だから、夫の転勤という大義名分が無ければ、辞めることができなかった。結果として、転職した今は自分に合った職に就くことができたので、そのあたり人生は面白くできていると思う。