何たる迷惑であることか!

独自の路線で生きています

妻が夫にキレるとき〜原因と解決へのアプローチ〜

 

 

 先日(2週間も前になってしまいましたが)、環さんのツイキャスを聴いて、いろいろと感じるところがあったので、記事を書きました。

 

1.はじめに 

 今回環さんが放送したツイキャスは、こちらの記事を下敷きにしています。

fuyu.hatenablog.com

fuyu.hatenablog.com

 

 こちらの記事について要約すると、

 

  • この4月から環さんは新社会人になった
  • 同じタイミングで彼女と同棲を始めた
  • 彼女は勤務環境により、帰宅時間が遅いことがしばしばある
  • 彼女は同棲まで実家暮らし、環さんは一人暮らしだった
  • 比較的早い時間に帰宅できる環さんが家事全般を請け負った
  • 環さんの家事について、彼女が怒りを爆発させるようになった
  • 彼女の怒りように、環さんは衰弱してしまった
  • 事態について、環さんから「家事のやり方についてキレられて辛い」と話し合いを行った
  • 話し合いにより、彼女のキレる頻度が減少した
  • 現在では、より良い関係が築けている

 

以下、記事より引用。 

一番大変だったのは彼女が仕事から疲れて帰ってくると私の家事上のミス(帰宅後の内鍵のかけ忘れ、カーテンの閉め忘れなど)について激怒し始めることだった。料理をして洗濯物をたたんで、それでも何か不手際があると怒られる。慣れない家事でミスをゼロにするように気を配るのは大変なストレスで、一時期は神経が衰弱し切っていた。

そこで彼女に、指摘された問題点については改善するよう努力しているけれど、怒られても私は変わらないという趣旨のことを伝えて、彼女が怒り出したときは、黙って自室に入って扉を閉めて放っておくことにした。怒っている人を放置するのはどうなんだ、ますます怒り出すんじゃないかという懸念が最初はあったけれど、結果的に彼女は怒り過ぎたことを反省してくれて、徐々に怒る回数を減らすように努めてくれた(彼女の方としても人への当りが強い気性は何とかしたいと日頃感じていたようだ)ので、今は平和に暮らせている

※下線・太字・赤字部分は筆者(id:kinaco68)による

 

 この記事、そしてツイキャス放送で環さんが話された問題について、何故ここまで感ずるものがあったかといえば、約半年前に、我が家でも全く同じ問題が勃発していたからでした。(役者の性別は逆でしたが)

 

 我が家の問題。それは、不器用で大雑把な作業者(妻) v.s. 粗捜しの上手い検証者(夫)  ファイッ

 ---ただし、両者の金銭負担額は同程度とする---

 要するに、買い物・洗濯・掃除・炊事・ゴミ出し等生活に必要な家事はほぼ妻がやっているにもかかわらず、家事に対する要求が高く、作業のミスや漏れを見つけるのが上手い夫が妻の仕事に文句をつけまくり、夫自身は一切の家事負担をしない。それでいて、家賃と食費は夫婦で割り勘、という絶対的な不公平が生じていたのでした。

 

 補足をしますと、我が家では、そもそも夫婦で家事分担をしよう、という発想自体がありませんでした。私(妻)が家事をするのが当然、そして仕事をしているのだから家賃や食費を半分負担するのも当然、と二人とも思い込んでいました。

 夫の帰宅時間は平均20時、妻の帰宅時間は平均22時。夫は夕食として妻が用意したおかずとご飯を食べ、余暇はゲームをして過ごします。妻は夫の平均2時間遅れで帰宅し、夜のうちにできる家事をこなしてから就寝、朝は夫より1時間早く起きてゴミ出しや洗濯などの家事を行います。 

 妻としてはなんとか家事をこなしているつもりなのですが、生来の雑さはどうしても家事に現れてしまいます。作業のミスや漏れについて、これまた生来目敏い性格である夫は指摘しないではいられません。仕事を全力でやった上で、家事に細かな指摘が入る。家事に対する夫からのフォローは一切なし。妻からすれば、自分のお金を払って、家事という仕事をさせていただいているようなものです。当然ですが、このような生活は妻を深く疲弊させるものでした。職場でも家庭でも、常に何かに追い立てられているようで、どこにいても安らげない。

 

 ストレス満載の環境で、私は「夫にキレまくる妻」になっていてもおかしくなかったと思います。幸か不幸か、私は感情の起伏が激しい割にそれをストレートに表現することができない性質の人間なので、夫に対して怒ったり、ましてやキレて喚くなどということは一切できませんでした。つまり、歴然とした不公平が目の前に横たわっていても、問題を表面化することができなかったのでした。

 

 何回かの話し合いにより、我が家ではこの問題の解決を図りました。 

 

2.なぜキレるのか 

 精神療法の一つ、対人関係療法では、対人関係において生じる問題は、双方の「期待のずれ」が原因としてある、と考えます。人間は、必ず相手に対して何らかの期待をしています。その期待が果たされなかったり、裏切られた場合、対人関係にストレスを感じます。この種のストレスが、家庭という最も重要な場で慢性化してしまうと、場合によっては精神を病むことにつながります。

 我が家の場合、家事について、妻と夫の間で相手に期待するものが異なっていました。

 

夫の期待……妻には、自分より先に帰宅して家で自分を待っていてほしい。 

      家事をするなら、丁寧に行ってほしい。

      仕事で疲れた自分を物理的・精神的にケアしてほしい

 

妻の期待……社会人として企業で働き、家賃や食費を払っているのだから、夫には自分を対等の関係として扱ってほしい

      どうしても雑な性格なので、家事に目くじら立てないでほしい。

      仕事で疲れた自分を精神的にケアしてほしい

  

 妻には自分をケアする存在であってほしい夫と、夫に同じ人間として扱ってほしい(がために無理を重ねる)妻。双方の期待のずれが、家事という形をとって、夫婦間のストレス源になっていたのでした。

 

3.「期待のずれ」を埋めるために、どう交渉するか

 「私は貴方より平均2時間多く残業してる、それで給料は貴方の三分の二」

 「ちゃんと家賃も半分払ってる」

 「わたしが全部家事もやって家賃も払ってて、そんで一挙手一投足に文句ばっかり言いよんのか」

 「こんなん、セックスできる奴隷じゃん!」

 

 これは、私が実際に夫に言った言葉です。

 

  夫がどう思っているか、妻が何を感じているか、実際に話し合ってみるまで我々は何もわかっていませんでした。夫はいつ帰っても明かりのついていない夫婦のアパートに不満を募らせており、妻はいくら頑張っても報われない家事作業に「なぜわかってくれないのか」と被害者意識を強めていました。私は、自分の帰りが遅いせいで夫が寂しがっていることなど考えたこともありませんでした。「おかえり」の言葉もおざなりにゲームに興じている姿に、憎しみさえ感じたものです。

 私たちは二人とも、「どうして相手は〜してくれないのか」、と伝えていない願望が裏切られ続けることに傷ついていたのです

 

 お互いに本心を伝えて、湧いたのは驚きと発見、そして同情でした。「かわいそうなことをしてしまったな」、私はいつの間にか相手に感情があり、想いがあり、深みがある人間であるということを忘れてしまっていたことに気付いたのでした。

 

 交渉の結果、妻は残業を辞め、夫は家事への口出しを辞める---ことはなかったのですが、少なくとも相手の思考について一辺の理解を得ることはできました。妻がつい仕事を抱え込み、完璧主義に陥った挙句、細部がおろそかになるのも、夫が全体を見て気がついたことを指摘せずにはいられないのも、生来のものでコントロールできないことなのです。けれども、「コントロールできるのにしない」と思い込んでいるか、「コントロールはできないが、できる限り相手の期待に沿うように努力している」と理解しているかでは、お互いに受けるストレスが大きく軽減するのでした。

 

4.おわりに 

 結果として、複数回の衝突とその度の話し合いを重ねた結果ではなく、夫の転勤に伴って私が仕事を辞め、家事に専念したことで、この問題は解決してしまいました。

 

 今や私は家賃も食費も負担せず、ただ毎日掃除をして食事を作り、夫の帰りを待っているだけだというのに、夫は家事について一つも不満を漏らさず、それどころか毎日感謝の言葉までくれます。私が会社員だった時分には作った料理を品評し、部屋の隅に溜まった埃を見つけては指摘していたというのに、信じがたい違いです。もしかしたら、夫も「嫁育てハッピーアドバイス☆」を入手したのかもしれません

 

 夫に対等な存在として扱われたいがために、無理をした結果が軽蔑を買っていた、というのはあまりに皮肉な事態でしたが、夫婦間の問題について、目を背けずに必ず話し合いをする、本心を伝える習慣が付いたことは非常に良かったと思っています。

 

 私も結婚するまでは共同生活、ひいては結婚自体を舐めてかかっていたクチですが(笑)、いろいろな角っこに頭をぶつけながらも、今のところ何とかやっています。これからも、いちいちぶつかりながら、努力していきたい所存です。相手が夫という個人だから、夫のことが好きだから、努力する気になれるのです。

 

【参考図書

  夫婦・パートナー関係のバイブル。

夫婦・パートナー関係 (対人関係療法で改善する)

夫婦・パートナー関係 (対人関係療法で改善する)

 

 

【参考記事】

 ちょうど悩んでいた時期に読んで、ぐっときた記事。

salucoro.hatenablog.com