何たる迷惑であることか!

独自の路線で生きています

怨霊出産ガンボー

  なぜ、「女は産む性」でなければならないのだろう?

  なぜ、「妊娠出産」の話題は女の一番柔らかいところに刺さるのだろう?

  なぜ、生殖能力は女に当然備わっていなければならないのだろう?

  なぜ、女は「産まなければならない」のだろう?

  なぜ、生殖に関する束縛が、脳に刷り込まれて離れないのだろう?

 

  なぜ?

 

プラナリア (文春文庫)

プラナリア (文春文庫)

 

 プラナリアみたいに、ちぎれたら命が増えればいいのに」

 
不妊治療について

 わたしは不妊治療によって生まれた子供である。 

 今から二十数年前、私の両親は結婚して1年半が経っても子供ができず、母だけが婦人科へ行った。

 当時の生殖医療がどの程度のものだったかはわからないが(今も産婦人科医療は神秘的な要素が強いように思う)、母は排卵誘発剤を処方され、毎朝体温計を咥えてカレンダーに書き込んでいった。そして心身ともに疲弊して治療を放り出したころ、ぽんと自然妊娠した、という。母はとにかくプライドの高い人だから、妊娠について「誰かの手助けを必要とした」ことが許せなかった。生まれた子供が女の子だったことに失望した。そして、何よりも第一子以降自分が妊娠しなかったことを深く憎んだ。

 父は不妊検査を拒んだ、というか自分に原因があるなど思いもしなかったようで何の医学的検査も受けていない。なので、夫婦のどちらに原因があったかはわからない。思うに、父は晩婚だったうえ健康にいろいろと問題を抱えていたから、父に原因があるような気がしなくもないのだが。

 

 姑も実母も問題なく妊娠・出産した人だったから(二人とも子育ては失敗したが)、そんな母をあからさまに責めた。とりわけ、祖父の意向で三人目を中絶した母方の祖母(母にとっての実母)は恨みが深かった。

 

 「私は何もせんでも、なんぼでも子供ができたわ」

 「それで、あんたはいつ産むの」

 

 母は、誰にも相談できずに追い詰められていった。そして、その憎しみは同じ「産む性」であるただ一人の娘へ、余すことなく注がれた。

 

 うまく言葉にすることができないのだけれど、わたしの骨には妊娠・出産に関する強迫観念が刷り込まれているような気がしてならない。

 

 妊娠も出産も、生物の機能の一つに過ぎない。

 産んだ・産まないで、人間の価値は、女の価値は何も変わらない。

 

 わかって、いるのに。

 

 月に一度、赤い手紙が届くたびに、死にたい気持ちになるのは何故なのだろう? 

 

 性の地獄から、産む地獄から、産めない地獄から、楽になりたい。

 早く、はやく、はやく・・・・・