何たる迷惑であることか!

独自の路線で生きています

心の背骨が折れてしまったようなんだ

 いまのおれが幸せか幸せじゃないかと言われたら、不幸せとは言えないだろう

 就活で魂を削られながらも就職して 浪人も留年もせず院まで出た

 毎朝電車で都内の会社へ出荷されてる

 あまりに貧乏で先の見えなかった学生時代からは夢にも思わなかった生活

 平凡―あの頃のおれは平凡という身分に心底憧れていた

 世間の見えない枠組みへ、はみ出さず突き出ず適合している

 誰もおれに後ろ指を指さない 誰もおれを迫害しない 誰もおれに気づかない 埋没こそ理想

 

 それを全て果たしたいま おれは何か所属していて 給料をもらって 消費生活を送っている

 なのにこの空虚さはなんだ 理想を捨てた魂の冷たさは何だ 時間をムダにすることを是とするこの心は何だ

 

 おれはどうやら 社会に適合するのと引き換えに心の背骨が折れてしまったようなんだ

 学生の頃のおれは世間を知らなかった 知らないなりに理想を描いていた 時間を無駄にすることを何より憎み、生産しないことを怖れていた

 熱中することが当たり前に存在し、没頭することは呼吸と同義だった

 

 いまのおれには何も響かない なんの理想も追えない 理想を追いたくないし、追う意味がわからない

 

 いまのおれは心の背骨が折れてしまったようなんだ 折れたなりにこの状態は嫌なんだ このまま何もせずにただ呼吸して死んでいくのは嫌なんだ

 

 もう一度、取り戻したい。我を忘れて没頭できるもの、情熱を傾けられるものを見つけたい。

 

 折れた骨は、くっつくときにより強くなる。それが生物の摂理なら、心の背骨もきっとよみがえると信じている。