何たる迷惑であることか!

独自の路線で生きています

うつから走って抜け出そう

 走ることを生活に取り入れて、今週で3か月めになる。

 不思議なことに、走り始めてから人生がおおむね良好に進むようになった気が、する。

 走る、といっても一般のイメージよりはずいぶん低いレベルのジョギングをしているだけだ。一日の一番暖かい時間である13~14時くらいの間に、大学の周りをだらだら走る。走るペースは8分/kmと、自転車よりも遅いくらいの、かろうじて眠らない程度の速度だ。

 本来はきちんとジョギングシューズを履いて、キロ~分で走るなどの目標を立てて走るべきなのだろうが、目的が「とにかく走ること、走り続けること」なので、それらにほとんど頓着していない。普段履きのスニーカーで、ストレッチもろくにせず(たまにコアほぐしをするくらい)、思い立ったらすぐに走り始める。

 ランニングの伴走者はもっぱらiPhoneアプリiPodの音楽のみ。2km走ったら止める日もあれば、10km目指して走る日もある。清々しい快晴の日でも、疲れていたり気分が乗らなかったら積極的に休む

 誰に追われるでもなく、ただ、自分が気持ちよく走ること。それだけを胸に走っている。その結果、肉体的にも精神的にも筆者の状態は以前に比べて大きく改善されたのである。

 

 なぜ走るのか

 昨年の11月ごろ、筆者は中度のうつ状態に悩まされていた。

何をするにも怖くて踏み出せない。いやな想像ばかりが心を支配し、べったりと寝ているのがやっと。すると、後回しにしていた課題が膨れ上がって襲い掛かってくる。シャワーを浴びることすら気力を振り絞らなければならない毎日が、延々と続いた。

 そんな時、偶然ネットで見つけた記事で、この本が紹介されていた。

 

脳を鍛えるには運動しかない!―最新科学でわかった脳細胞の増やし方

脳を鍛えるには運動しかない!―最新科学でわかった脳細胞の増やし方

 

 藁をもつかむ気持ちで購入したこの本は、筆者に驚くほど多くの学びを与えてくれた。

 この本の中身を自分なりに要約すると、

    • 過度のストレスにさらされると脳(樹状細胞)は委縮するが、軽度のストレスがかかるとむしろ増強する
  • 運動は脳にとって適度なストレスとなり、運動によって脳内の樹状細胞は成長する
  • 運動は脳内のBNDF、化学物質のバランスを整える
  • うつ、ADHDを運動は改善する
  • 運動を生活に無理なく組み込むこと、一人でやり続けるのではなく、仲間を作ることが大切

 運動がもたらす効能は、肉体に及ぼす影響よりも脳へ及ぼす影響のほうがはるかに大きいという。その中でも、運動がうつ病の改善に効果を示した実証結果が筆者の目を引いた。

 そして、筆者は走り始めた。何の目標も目的も持たず、ただ、頭上に覆いかぶさる鉛の盥から一時でも解放されることだけを期待して。

 

 走り出すときはたいてい、足は重く肩がこわばり、寒気がいつも以上に肌に突き刺さる気がする。走り出して5分間は、ほとんど意地で走り続ける。そのうちに自動操縦のような状態になり、滑らかに走ることができるようになる。

 そして、走り始めた次の日から、筆者は思いもよらぬ気持ちに襲われ続けることとなった。「もっと走りたい、走り続けたい」という、謎の高揚感に。

 

3か月走ってみて気づいたこと

 

 週に3日走れば御の字、くらいのペースで不真面目なジョギングは続いている。ジョギングシューズなしのジョギングは長期的に見て故障につながるだろう。フォームも改善の余地はたくさんあるだろう。また、出来ればもっと長い距離をもっと速く、昼ではなく朝に走れるようになるのが理想だが、まあ無理はしない。頑張って無理をしないことが、今の筆者に必要なことだとわかっているからだ。

 

 日常的に走り始めて3か月、実感した結果としては、

 

・睡眠の質が改善した

・体重が減少した

・猫背が直った

 などの身体面への効果に加えて、

 

・寝たきり状態に陥る回数が減った

・以前よりも前向きな考えを持てるようになった

・課題に立ち向かう気力が湧いてきた

 精神的な面に及ぼす効果がとても大きかった。

 

 精神面は数値にして表すことができないため、あくまでも自分の主観のみによる評価だが、筆者は以前よりも悲観的な考えや厭世的な思いを抱かないようになった。以前よりも前向きに、積極的になったと自覚している。

 

 過度のストレスによってうつ状態に陥り、コルチゾールの攻撃に晒された脳は委縮してしまう。と、文字通りその人の世界は縮んでいく。今まで蓄えた知識も、信頼できる仲間にも、アクセスできなくなる。

ただ、ストレスは味方につけることもできる。その筆頭にして普遍的な選択が、運動をすることだ。

 うつの世界の恐怖から、人間は走って抜け出すことができるのだ。