何たる迷惑であることか!

独自の路線で生きています

桜の樹の下でヤギに遭遇した話

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 帰り道、近所の公園の桜が満開だったので写真を撮っていたら、ヤギに遭遇した。薄汚れたオスのヤギだった。偶蹄類特有の横たわる瞳孔が、見るともなしにこちらを向いていた。田舎とはいえ住宅地である。しかしヤギは住宅地の文脈を完全に無視して、実存的に存在していた。

 ヤギにはこれまた薄汚れた首輪がついており、後方に手綱を引いたおっさんが居たから幻覚ではないと思われる。おっさんはとりたててヤギに注意を払うでもなく、虚ろな表情で空を眺めていた。そして、ヤギとおっさんから5mほど離れた田んぼでは、おばさんが刈り払い機をぶん回して雑草を刈っていた。

 

 桜舞い散るうららかな春の日。いまいち表情の読めない横たわる瞳孔と見つめあいながら、刈り払い機の音だけがぶおおおおおんぶおおおおおんと響いていた。まるで、吾妻ひでおの漫画のようであった。(了)

 

 

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 ヤギの視線を浴びつつ撮った桜は綺麗でした。

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 花見にヤギは特にいらない。

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